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インデックス投資が好きです/取得資格:宅建・FP2級/1988年生まれ/エンジニア/2050年3月末(61歳)でセミリタイア予定

ジンバブエ航空への投資でリスクが下がる?

先日、柴山和久著『これからの投資の思考法』(2018)を読みました。

初心者向けの良書でした。

 

本書で、分散投資に関する勘違いしがちな問題が提示されていたので紹介します。

個人的には、本書の中で一番参考になる部分でした。

 

本書を一部引用します↓

教授とMBA学生によるこんな押し問答もありました。

 

教授:「今あなたは米国企業500社に分散して投資をしているとしよう。運用資金の総額は変えずに投資先を500社から501社に増やすとして、ジンバブエ航空の株式を新たに購入するとする。ジンバブエ航空が実在するかどうか知らないが、ひとまず実在するということにしよう。さてジンバブエ航空に投資をすることで、投資全体のリスクは上がるだろうか、下がるだろうか」

 

MBA学生:「投資のリスクは当然、上がります」

 

教授:「どうしてだね?」

 

MBA学生:「ジンバブエ航空への投資は高いリスクがあるからです」

 

教授:「君はわかっていないようだね。いいかね、ジンバブエ航空の業績は、アメリカ経済の景気とはほぼ無関係だと言ってよいだろう。ジンバブエ航空は、ジンバブエという独裁国家の政策の影響を大きく受けるからだ。こう仮定した場合、ジンバブエ航空に投資をすることによって、投資全体のリスクは上がるだろうか、下がるだろうか」

 

MBA学生:「リスクは上がります。ジンバブエの政治リスクも加わりますし」

 

教授:(首を振りながら)「いいかね。米国企業500社への投資に、ジンバブエ航空への投資を加えたら、リスクは下がる。これらの株価の動きが無関係だと仮定すれば、リスクが打ち消され合い、全体のリスクは下がる。これが分散効果だ」

 

MBA学生:「えっ!? もう一度説明してもらえますか?」

 

 教鞭をとるかたわら、機関投資家のアドバイザーとしても大成功を収めていた教授は、しまいにはしびれを切らし、「理解できない人には理解できない」と身も蓋もないことを言い始める始末でした。

(引用おわり)

 

僕も、サラッと読んだときは、「MBA学生と同じく、ハイリスク銘柄への投資を加えたらリスクは上がるのでは?」と思いました。

 

ちなみに、ここに出てくるMBA学生というのはINSEADという世界トップレベルのMBA課程らしいです。世界トップレベルのMBA学生ですら、勘違いする人がいるような問題なのでしょう。

 

でも、よく考えてみると「米国企業500社とジンバブエ航空の相関係数が具体的に示されていないので、リスクが上がるか下がるかは分からないのでは?」と思いました。と、同時に、実際に、自分の手で、リスク(標準偏差)の計算をしてみたくなりました。

 

実際に似たような事例をシミュレーションしてみます。次のような問題を考えました。

 

【問題】SP500の期待リターンを7%(リスク18%)、ジンバブエ航空の期待リターンを9%(リスク56%)とします。「SP500に100%投資する」と「SP500に99%投資してジンバブエ航空に1%投資する」を比較して、どちらがリスクが高いかシミュレーションせよ。両者の相関係数は-0.2とする。

 

※ SP500とジンバブエ航空の期待リターンとリスクは、僕が思いついた数字を適当に書いただけで、深い意味はありません

 

では、シミュレーションしてみます!

 

与えられた条件から、「SP500に100%投資する」と「SP500に99%投資してジンバブエ航空に1%投資する」の期待リターンと標準偏差を計算して、プロットしたのが下図です↓

うーん、たしかに、計算上は、ジンバブエ航空を1%混ぜたほうがリスクは小さくなるようです。

 

では、少しずつジンバブエ航空の比率を高めて、ジンバブエ航空を20%まで増やした場合、期待リターンとリスクはどのように推移するのでしょうか。

 

計算してみました↓

ちなみに、ジンバブエ航空を13.6%混ぜたときにリスク最小になっています。シャープレシオは、ジンバブエ航空を15.4%混ぜたときに最大になっています。

 

では、期待リターンとかリスクの条件は同じままで、両者の相関係数を-0.2から0になった場合はどう変化するのでしょうか↓

計算すると、ジンバブエ航空を9.36%混ぜたときに、リスク最小になります。あ、先ほどのグラフと横軸のスケールを変えたせいで、パッと見た感じ、相関係数 r = 0 のほうがリスク減少するように感じますが、そんなことないです。相関係数が高まれば高まるほど、ジンバブエ航空の投資効果は薄れます。

 

では、相関係数を0.5まで上昇させると、どうなるでしょうか。

相関係数が0.5になると、SP500に100%投資するのがリスク最小です。ジンバブエ航空を0.1%でも混ぜるとリスクは上昇します。

 

【追記】

「SP500に100%投資」と「SP500に90%投資、ジンバブエ航空に10%投資」までの配分をプロットしたものを、相関係数 r = -0.2 , 0 , 0.5 の3パターン一緒に載せたグラフです↓

もし、今後も、SP500とジンバブエ航空の相関係数が低いという確信があるのであれば、SP500の投資に2%くらいジンバブエ航空のような銘柄を混ぜても良いかもしれませんね。

 

このように、相関係数が低いアセットに投資することで分散効果が得られるので、株式以外にも投資するのは1つの作戦だと思います。個人的には、暗号資産を金融資産の2〜10%くらい混ぜると面白いんじゃないかと思います。

 

ただ、当然ながら、いくら株式との相関係数が低いといえども、そもそも期待リターンが低ければ、意味がありません…。とくに、個人的には、ゴールド投資は、金融資産が少ないうちには、投資する必要性が低いと思っています(分散効果よりも、手数料の高さと期待リターンの低さのデメリットが上回りそうだと思っています)。

 

では、「金融資産がいくらになればゴールド投資を始めるべきか?」については今後の検討課題にしたいと思います。将来的に、金融資産が増えれば、ゴールド投資の有益性について考える必要があるでしょう。