【問題】
2024年から新NISAが始まります。2023年末で評価額1500円の株式(投資元本700円)を特定口座で保有中のYさんが居ます。Yさんは、今後、追加投資をする予定はありません。Yさんは、新NISAに備えて、2023年末で特定口座の株式を全額売却して、2024年の年始から新NISAで株式運用すべきでしょうか。それとも、そのまま特定口座で運用を続けたほうが良いでしょうか。答えなさい。
【僕の考え】
結論を先に書くと、2023年末で特定口座を売却して、2024年から新NISAで運用したほうが良いです。
今日は、この問題について考えてみます。
【具体例を代入してみる】
まず、条件を仮定して、実際にシミュレーションしてみます。
条件
・Yさんは、2050年末に株式を売却する
・2024年〜20250年の運用利回りを5%とする
(a) 特定口座のまま運用を続け2050年末に売却
2024年年始の運用資産を計算すると、1,500円です。これを2050年まで27年間の期間、年利5%で運用すると、2050年末には5,600円になります。2050年末に株式を売却して、利益の20%に課税されるとすると、税金は980円です。よって、税引後の4,620円が手元に残ります。
(b)2023年末に株式を売却して、2024年から新NISAで運用して、2050年末に売却
まず、2023年末に株式を売却するときにかかる税金を計算すると、160円です。なので、2024年から新NISAには、1,340円を投資することができます。これを2050年まで27年間の期間、年利5%で運用すると、2050年末には5,003円になります。
以上のことから、一般的には、選択肢(b)のほうが有利そうです。どれだけ有利かは、(b)-(a)を計算すれば、383円と分かります。
ちなみに、これだけの計算で、すべての条件で選択肢(b)のほうが有利と断言するのは誤りです。運用利回りと運用年数によっては、最終的に利益がでない場合があります。その場合、税金の計算方法が異なります。たとえば、運用利回りを-1%とすると、選択肢(a)のほうが34円お得です。
【一般的な解答】
余談ですが、僕は、英語・数学・国語・理科・社会の中で数学が一番苦手で、英語が一番得意です。数学が苦手なので、数学的に問題を解こうとすると、記号の羅列で頭が混乱して、計算ミスを誘発しがちです。ですが、普通の一般人にとっては、数学的に解答を求めるほうがシンプルで応用もききます。
Yさんの例に戻ります。Yさんの例を数学的に考察してみます。
・2023年末の特定口座の株式評価額をBとする(元本はAとし、B-A>0 とする)
・2023年からn年後末に売却する
・n年間の期間の運用利回りをr(r>0)とする
(a) 特定口座のまま運用を続け(2023+n)年末に売却
2024年年始の株式評価額はBで、これをn年間運用して、(2023+n)年末の株式評価額を計算すると、
B*(1+r)^n
(2023+n)年末に売却したときに、B-A>0とr>0という条件から、必ず利益が出ていることになるから、利益の20%に税金がかかるとすると、税金額は、0.2*{B*(1+r)^n-A}となり、
税引後は「B*(1+r)^n-0.2*{B*(1+r)^n-A}」が手元に残る。展開して整理すると、税引後に残る金額は、
0.8B*(1+r)^n+0.2A …(a)
となる。
(b)2023年末に株式を売却して、2024年から新NISAで運用して、(2023+n)年末に売却
まず、2023年末に株式を売却するときにかかる税金は(B-A)*0.2です。なので、2024年から新NISAには、B-(B-A)*0.2を投資することができます。もう少し整理すると、0.8B+0.2Aを投資することができます。これをn年間運用して、(2023+n)年末の株式評価額を計算すると、
0.8B*(1+r)^n+0.2A*(1+r)^n …(b)
となる。
選択肢(b)が選択肢(a)と比べて、どれだけ有利かは、(b)-(a)を計算すれば良いので、
0.2A*(1+r)^n-0.2A …(※)
となります。
式(※)を見ると、式にBが含まれていません。つまり、2023年末時点の利益(=B-A)は、最終的には関係ありません。また、式(※)がプラスになるかマイナスには、(1+r)^n>1を判別すれば良いわけですから、プラスです。つまり、選択肢(b)のほうが有利です。
こうやって、数式で表したほうが、シンプルで応用が効きますね。一般的には、数式で解答するほうが好まれると思います。ただ、僕は、数学が苦手なので、文字の羅列は嫌いです。ちなみに、数学は厳密さが求められるので、2023年末時点で利益が出ていない場合、つまり、条件のB-A>0が成り立たない場合や、r>0が成り立たない場合も考えておく必要がありますね。条件によっては、選択肢(a)のほうが有利になります。実用的には、「基本的には選択肢(b)のほうが有利」と覚えておけば良いです。
ここで、式(※)を検算してみましょう。先ほどのシミュレーションで使った具体例を代入してみます。
A = 700円
r = 0.05
n = 27
を式(※)に代入して、小数点以下を四捨五入すると、383円になります。よって、シミュレーション結果と一致していることが確認できます。